乳歯入門
2歳半~6歳頃

【小児歯科医監修】子どもの口呼吸の原因と歯並びの関係

わたし、知らないうちにポカンと口を開けてることが多いみたい。
そのたびにママがわたしの口を閉じて「もうお姉さんだから口を閉じてお鼻で息をしようね」と言ってくるの。でも、口を閉じるとなんだか息苦しくて、いやな感じがするんだ。「ただの“くせ”なんだから、なおそうって思えばなおせるのよ!」ってママは言うけど、どうしたらいいのかな?

子どもが口を開けて呼吸している、いわゆる「口呼吸」が気になるというお母さんの声を最近よく聞きます。口呼吸は単なるくせではなく、歯並びやあごなどの口周りの形など複雑な原因が隠れていることもあります。口呼吸の原因や対処法、改善策などを小児歯科医・歯学博士の坂部潤先生にうかがいました。

呼吸の仕方と歯並びは深く関係している

口呼吸が及ぼす、体への影響

私たち人間は、鼻で呼吸をするのが通常の状態です。一方で、何らかの理由で口をぽかんと開けたまま口で呼吸をする人も増えています。子どものうちから口呼吸がくせになると、口の周りや全身にさまざまな影響を及ぼすことがあるので、注意しなければいけません。

日常的に口呼吸をしていると、鼻の粘膜や鼻毛というフィルターを通さずに空気が直接体内に取りこまれるので、細菌やウイルスに感染するリスクが高まります。また、口の中が常に乾燥してしまうため、だ液の作用が弱まり、むし歯や歯肉炎などのトラブルを引き起こすおそれもあります。

それだけではありません。口呼吸によって口をぽかんと開け続けることで口の周りの筋肉が十分に発達せず、だんだん顔つきが変化してぼんやりとした表情になることがあります。さらに口を開いて食事をする「クチャクチャ食べ」や、発音が不明瞭になってしまうこともあります。

口呼吸が歯並びに影響することも

口呼吸は、歯並びにも大きく影響しています。本来、私たちの舌はほとんど口蓋(口の中の上側)におさまっていますが、口呼吸が習慣になっている人は、舌の位置がだらんと下がっていることが多いです。あごや歯並びは、そもそも舌が適切な位置にあって、唇や頬からの圧力がかかることで望ましい形に発達していきますが、口呼吸だと舌の位置が下がりやすいので上あごがきちんと発達しにくくなります。

これが歯並びにも影響を及ぼし、出っ歯になる「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」や、歯がバラバラの方向に生える「乱ぐい歯」などの原因になることがあります。また、舌の位置が下がることで舌を前歯の方向に突き出しやすくなり、上の前歯と下の前歯の間にすき間が生じる「開咬(かいこう)」を引き起こすこともあります。

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「くせ」では片付けられない、口呼吸の原因

子どもの口呼吸には、以下のようなさまざまな原因があります。単純に「口を閉じてね」と言い聞かせるだけでは解決できない場合は、耳鼻咽喉科や歯科医院などの専門医を受診しましょう。

鼻づまり

風邪やアレルギー性鼻炎などが原因で、鼻がつまっていて鼻呼吸がしづらいために一時的に口呼吸になることがあります。特にアレルギー性鼻炎は慢性化してしまうと、それがくせになり、口呼吸が習慣になることも。まずは耳鼻咽喉科で元の病気をしっかり治療することが必要です。

歯並びやあごなどの口周りの形

歯並びやあごの発達に問題があるなど、すぐには治せない原因が隠れていることがあります。先ほど、口呼吸が歯並びにも影響すると述べましたが、逆のパターンで歯並びや口周りの形が原因で結果的に口呼吸になってしまうケースもあります。

例えば、上顎前突(出っ歯)の場合は唇が閉まりにくいため、口呼吸になりやすいです。また、もともと上あごの幅が狭くて舌を上げるスペースがないため、口が自然に開いてしまうケースもあります。こうした場合には、まずは小児歯科などでの診断を受け、口の中の状態によっては矯正などの治療を受けることが必要になります。

扁桃肥大(へんとうひだい)

扁桃肥大とは、のどにある口蓋扁桃(扁桃腺)と呼ばれるリンパ組織が通常よりも大きくなった状態のことです。

扁桃肥大の子どもは、鼻から空気が流れ込みにくいので、その結果、口呼吸になりやすくなってしまいます。舌の位置や動きにも影響がある場合は扁桃腺の切除を検討しますが、扁桃肥大は10歳から12歳ごろがピークで、それ以降はだんだん小さくなるため、多くの場合は経過を見守ります。気になる場合は耳鼻咽喉科へ相談しましょう。

口呼吸をしている子どもの特徴とその理由

子どもが口呼吸かどうかは、テレビを見ている時や寝ている時などにぽかんと口を開けていることがないかで見分けることができます。また、その他にも口呼吸をしているお子さんは次のような特徴や行動が見られる場合があります。ただし、これだけでは判断が難しいので、気になる場合は耳鼻咽喉科や小児歯科へ相談しましょう。

上唇が下唇よりも白くなりやすい

唇の色は、口呼吸を見分ける目安の一つになります。通常は上下の唇が同じ色ですが、口呼吸をしている子どもは、ずっと口を開けているので慢性的に上唇だけが乾燥していて白くなっていたり、唇が厚くなって肌との境目があいまいになっていることがあります。

唇をなめる

唇が乾燥しているのが気になって、よく唇をなめるしぐさをすることがあります。

茶渋などの色の汚れが前歯の先端につきやすい

口をぽかんと開けているのでいつも前歯が乾燥していて、茶渋などの色の汚れがつきやすいです。そのため、特に前歯の先端が色素沈着で汚れる傾向があります。

発音が不明瞭になりやすい。滑舌が悪くなりやすい

舌が前に出ていて口呼吸になっている場合、発音が不明瞭になり滑舌が悪くなりやすい傾向があります。

猫背などの悪い姿勢

猫背になると、空気の通り道が狭くなり胸や肺を圧迫して呼吸が浅くなる傾向にあります。こうした姿勢が悪い状態は、口呼吸にも関連していることがあります。

口呼吸を改善するための方法

まずは耳鼻咽喉科や小児歯科を受診しましょう

風邪やアレルギー性鼻炎などで鼻づまりがある場合は耳鼻咽喉科などの専門医を受診しましょう。

風邪やアレルギー性鼻炎などがなく、鼻がつまっていないのに口呼吸がなかなか治らない、かつ歯並びや噛み合わせなどで気になることがある場合は、ぜひ小児歯科を受診してください。

子どもの歯の矯正などの治療を行う時は、まずは「形態」から治す、もしくは「機能」から治すという2つのアプローチがあります。

例えば、出っ歯という「形態」を治してから口を閉じる装置を使って口呼吸という「機能」を改善するのか、反対に口呼吸を改善してから出っ歯を治すのかということです。これはお子さんの年齢や口の中の様子によって異なるので、いずれにしてもまずは受診することが大切です。

子ども本人の努力では改善できないこともある

私が口呼吸のお悩みで来院したお子さんのご両親によく言うのは、「この子はいつも口をポカンと開けてボーっとしていて…」などと、子ども本人の努力不足のようには決めつけないでほしいということです。

これまでご説明したように、口呼吸は多くの場合、言って聞かせれば治る症状ではありません。まずは診察をして、必要に応じた治療を行うことで自然と鼻呼吸できるように環境を整えてあげることが大切です。耳鼻咽喉科や小児歯科ではそのお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にご相談ください。

口呼吸がなかなか治らない場合は、子ども本人の努力だけでは改善できないこともあります。本質的な原因を調べるために、耳鼻咽喉科や小児歯科などを受診しましょう。小児歯科では歯並びやあごの形などを診て、お子さんに合った治療法をお話しします。

坂部 潤

坂部 潤(小児歯科医、歯学博士)

日本小児歯科学会認定小児歯科専門医。東京・目黒、成城、麻布にある小児歯科専門医院キッズデンタルを開業。継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。

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