乳歯入門
生後〜2歳半頃

乳歯のむし歯(虫歯)を防ぐためにママが今日からできること(1)
~イヤイヤ期の歯みがき編~

あ〜嫌!もっと遊びたいのに、ママが「歯みがきの時間だよ」って。わたしはもっと遊びたいのに!逃げたり隠れたりすると、ママが怖い顔して近づいてくるの。ママの怖い顔を見るのも嫌!歯みがきって、やらなくちゃダメ?

多くのママが頭を悩ませる、子どものむし歯予防問題。『乳歯のむし歯(虫歯)を防ぐために今日からできること』シリーズの第1回は、「イヤイヤ期の歯みがきはどうすればいい?」「正しく仕上げみがきができているか心配……」といったママの疑問や不安に、小児歯科医・歯学博士の坂部潤先生が答えてくれました!

坂部 潤

坂部 潤
(小児歯科医、歯学博士)

日本小児歯科学会認定小児歯科専門医。東京・目黒、成城、麻布にある小児歯科専門医院キッズデンタルを開業。継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。

イヤイヤ期はむし歯になりやすい時期

我が家の歯みがきプロレス状態 我が家の歯みがきプロレス状態
ママ

坂部先生!うちの2歳の息子は、本当に歯みがきが大嫌いなんです。私が歯ブラシを持って現れたとたん、逃げ回るし、大泣きするし……。無理やり押さえつけて歯みがきをすることもあるんですけど、そこまでしていいのかなと罪悪感がすごくて、私もう疲れました……。

坂部 潤

坂部先生
大変でしたね……。状況、よく分かります。1~2歳の時期は、歯みがきを嫌がること自体はまったく普通のことです。ただ、むし歯ができやすくなるのも、ちょうど1歳半から2歳くらいのイヤイヤ期なんですよ。

ですから「こんなことまでしてやる必要ないのでは?」と思っても、そんなことをしてでも歯みがきはしっかりとやるべきです!とはハッキリお伝えしたいですね。

ママ

よかった!じゃあ毎回プロレスみたいに取っ組み合って、口をこじ開けてまでみがいていたわたしの努力は間違ってなかったんですね(涙)。でも、どうしてイヤイヤ期はむし歯になりやすいんですか?

坂部 潤

坂部先生
ちょうど1歳半~2歳半は乳歯の奥歯が生えそろう時期なのですが、やはり「奥歯のかみ合わせ」や、「歯と歯の間」に汚れがたまりやすくなります。

それに、だんだん自我が出てきて食生活の変化が起こる時期です。お菓子が好きになったり、ぐずった時などに周りがついお菓子をあげてしまう機会が増えたりすることが主な理由ではないかといわれています。

ママ

ギクッ。まさに私、静かにしてほしい時によくお菓子をあげちゃってます。気をつけなきゃ……。

幼児 アイスクリーム

イヤイヤ期の子どもに仕上げみがきをするコツ

ママ

イヤイヤ期とはいっても、毎回全力で拒絶されるのがつらくて……。もっとスムーズに歯みがきをしてあげたいんですが、イヤイヤ期の歯みがきのコツとか極意ってありますか?

坂部 潤

坂部先生
最初の環境づくりが最も大切です。仕上げみがきをする人、時間、場所をできるだけ毎日一定にするのがいいでね。

そして、痛くしないように手足と頭をギュっと押さえつけて、短時間でしっかり歯みがきしてあげること。時間をかけてやるとお子さんも苦痛ですし、イヤイヤは増すばかりです。「歯みがきは嫌いだけど、いつもすぐ終わるなあ」と学んでくれれば、だんだんおさまってくるはずです。

ママ

今は泣き叫んで嫌がっていても、おさまる日は来るのでしょうか……。

坂部 潤

坂部先生
時期が来ればは必ず大丈夫になりますから、安心して今はしっかりみがいてあげてくださいね。

また、大人が歯みがきをしているところを見せるのも大変効果的です。

子どもが歯ブラシに親しみを持ったり、歯みがきの真似をしてくれるようになります。できれば歯が生え始める赤ちゃんのころから、お口のスキンシップをとっておくことも大切。
清潔にした手指で口の周りにやさしく触れたり、指で軽く歯ぐきを触ったり、赤ちゃんに気持ち良さを感じさせてあげることからはじめてみるといいですね。

幼児 歯みがき

子どもの歯みがきは回数よりも、1回をしっかりみがくことを意識して

ママ

2歳の子どもだと、1日何回みがけば大丈夫ですか?

坂部 潤

坂部先生
基本的には、食べたらみがくという習慣付けのために毎食後の歯みがきは行ってほしいです。どうしても毎食後がむずかしい場合は、最低でも1日1回はちゃんとみがいてほしいと思います。

ママ

どのタイミングが一番大切なのでしょうか?

坂部 潤

坂部先生
夕ごはんを食べた後から寝る前がいちばんいいですね。

むし歯というのは、甘いものを食べたらその場ですぐ穴が開くわけではなく、数週間から数カ月単位で進行します。唾液にはむし歯になるリスクを減らす作用があるのですが、寝ている間は唾液の分泌が下がるので、夜はむし歯リスクが高くなります。

ですから、毎食後きっちり必ずみがけなかったとしても寝る前の1回はしっかりみがくことが大切です。

ママ

なるほど~。それを聞いてほっとしました。

坂部 潤

坂部先生
1日の回数を気にするよりも、1回しっかりみがくことを心がけたほうがいいですね。
乳歯のむし歯になりやすいところは、「奥歯のかみ合わせ」「上の前歯の外側」「歯と歯の間」です。この部分は優先的にみがいてあげてください。

乳児幼児 歯みがき

仕上げみがきをするときの正しいやり方

ママ

私の仕上げみがきが合っているか不安なんです。正しい方法を教えてください!

坂部 潤

坂部先生
まず、お子さんをあおむけに寝かせて、ひざの上に頭を乗せ、上からのぞきこむような姿勢で行うといいです。
そして、片方の手でお子さんの唇をどけて汚れの残りやすい歯と歯ぐきの境目をきちんとみがけるようにして、もう片方の利き手で歯ブラシを持ちます。

特に、上唇の裏側にあるスジ(上唇小帯)に歯ブラシが当たると痛いので、指でガードしながらみがきます。ちなみに、向かい合わせの姿勢は頭が固定しづらいですし、上の奥歯がほとんど見えないので、おすすめしません。

イヤイヤ期でお子さんの体をおさえつけなければいけない時には、他の人に手伝ってもらうか、それができなければ自分の太ももでお子さんの頭を挟んで、お子さんの手足は自分の足で押さえこみ、動かないように固定します。

ママ

歯ブラシの持ち方は、グーで持って大丈夫ですか?

坂部 潤

坂部先生
グーだと、力が強くなりすぎたり、細かく動かなかったりします。「鉛筆持ち」のほうが角度が付けやすく、力のコントロールがしやすいのでおすすめです。

それと、みなさん右利き・左利きかどうかでみがき方にクセがあります。たとえば右利きの人は、右側の犬歯あたりがみがきにくくて、汚れが残りやすいです。

そのため、私は①かむ面、②外側、③内側の順にみがいていく「順番みがき」を推奨しています。

右利きの人なら、まずはお子さんの口の左側に歯ブラシを当てて、外側をU字型にみがきます。次にかむ面を両方みがいて、それから内側をU字型にみがいていきます。

ママ

歯ブラシを強くあてると、乳歯や歯ぐきが傷ついちゃうんですよね。できるだけ軽~くあてたほうがいいですか?

坂部 潤

坂部先生
軽く当てるだけではうまく汚れが落ちませんから、歯ブラシの毛を歯の面に垂直に当てた時に、毛先が歯にあたって少し広がるくらいの力が理想です。そうすると毛先が歯と歯ぐきの境目の部分や、歯と歯の間にまで入り込んで汚れをかき出してくれます。

ママ

年齢ごとのみがき方の違いってありますか?

坂部 潤

坂部先生
前歯が1本でも生えはじめたら、歯みがきを始めましょう。1歳半ごろになって奥歯が生えてきたら、歯のみぞができてむし歯ができやすくなるので、歯ブラシを使ってきっちりみがくようにします。

それと、歯ブラシの動かし方も大事なポイントです。毛先が細かい部分に入り込むように、5〜10mmを目安に小刻みに動かし1〜2歯ずつみがきましょう。

乳児幼児 歯みがき

赤ちゃんにも歯肉炎はある

ママ

歯をみがいている時に、たまに歯ぐきから血が出る時があるんです。力が強すぎるんでしょうか?

坂部 潤

坂部先生
もちろん力が強かったり、「かため」のタイプの歯ブラシでゴシゴシみがいて歯肉を傷付けてしまうとそうなることもあるのですが、むしろ9割方は歯肉炎であることが多いんです。

ママ

えっ! 赤ちゃんも歯肉炎になるんですか?

坂部 潤

坂部先生
はい。歯に汚れがつくと、2から3日くらい経つと歯肉炎になり、歯ぐきのキワに炎症性の悪い血がたまってしまいます。
そうすると普通の歯ブラシの力でも出血します。健康なところを傷つけたのではなく、「ちゃんとみがけていませんでしたよ」というサインだという可能性が高いですね。

歯肉炎であれば2~3日しっかりみがくことで血が出なくなります。もし血が止まらないなど気になるようであれば、歯科を受診してください。

ママ

歯肉炎って、私たちくらいの年齢になってからっていうイメージがありました。

坂部 潤

坂部先生
歯肉炎は歯垢(プラーク)が原因で歯ぐきがはれるものなので、子どもでもなる可能性もあるんですよ。
さらに大人の場合は歯肉炎が進行した歯周炎になる恐れがあります。小さいときから歯だけでなく歯ぐきのケアのためにも歯みがきは大切です。

ガーゼみがきと歯ブラシみがきの違い

ママ

そういえば、うちの地域の保健指導で保健師さんが「1歳になるまでは歯ブラシじゃなくてガーゼでみがくだけで大丈夫」って言っていたんですけど、ガーゼでもいいんですか?

坂部 潤

坂部先生
確かに、0歳だとまだ汚れもつきにくいですし、実際にむし歯になるリスクも低いので、ガーゼをおすすめする専門家もいます。

ただ、やはりガーゼでは取りにくい汚れがありますし、お子さんに歯ブラシの刺激に慣れてもらう意味でも、歯ブラシを使ったほうがいいと思います。前歯だけでもいいので、まずは子ども用の歯ブラシでみがきはじめてくださいね。

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