乳歯入門
2歳半~6歳頃

【小児歯科医監修】子どもの歯並び② 下顎前突(反対咬合・受け口)

  • LINEで送る

パパは子どもの頃に「受け口」だったみたい。だから、わたしの歯並びのこともずっと気にしているんだって。「歯並びは遺伝することが多いっていうから、おちびちゃんも気を付けないと…」って、わたしのお口を見ては心配してる。受け口って、どんなお口のことなの?

子どもの歯並びシリーズ第2回は、下顎前突(反対咬合・受け口)について。この症状は、下の歯が突き出ていることから「受け口」ともいわれ、子どもの歯並びの中でも特に注意したいものです。特徴や具体的な治療法を、小児歯科医・歯学博士の坂部潤先生に聞きました。

【小児歯科医監修】子どもの歯並び② 下顎前突(反対咬合・受け口) |ママ、あのね。 【小児歯科医監修】子どもの歯並び② 下顎前突(反対咬合・受け口) |ママ、あのね。
  • 【この記事のポイント】
  • 下顎前突(反対咬合・受け口)とは、下の歯が上の歯よりも前に突き出ている状態のこと
  • ものがうまくかめない、発音が舌足らずになるなどの症状がある
  • 下あごが成長する前に、早めに治療するのが一般的(3~6歳頃)
  • マウスピースやフェイスマスクなどの専用器具を使って治療する
  • 再発率が高いので、治療後も定期健診で継続的に様子を見ることもある
  • 下顎前突のチェックリスト
    ①〜③のいずれかにあてはまる場合は下顎前突(反対咬合・受け口)の可能性があります。
  • ①奥歯をしっかりかんだ状態で「イー」をした時、下の歯が上の歯よりも突き出ている
  • ②あごがちゃんと動かず、食事の時に食べづらい
  • ③発音が舌足らずで、聞き取りにくい

幼児期のうちに治したい下顎前突(反対咬合・受け口)

下顎前突(反対咬合・受け口)の発生頻度は「2%」程度

「下顎前突」は、下の歯が上の歯よりも前に突き出ている状態のことをいい、「反対咬合」「受け口」ともいわれています

前歯は本来、上の歯が下の歯にかぶさっている状態が正しいかみ合わせです。これが逆になって、下の歯のほうが前に出ていると下顎前突(以下、「受け口」と表記)になります。

子どもの歯並びの問題のうち、受け口の発生頻度は2%と、それほど高くはありません。しかし、そのまま放っておくと骨格的な変形が強まり、下あごがどんどん突き出てしまいます。下あごは「長管(ちょうかん)骨」という骨の一種で、身長が伸びる小学生以降にぐんぐん成長するため、幼児期のうちに治すことが大切です。

【関連記事】

子どもに多い「不正咬合」の種類とは 歯医者さんが教える「子どもの歯並び」について

食事や発音がうまくできず、顎関節症のリスクも

私たちはごはんを食べる時に、奥歯でものをかみ砕く「すりあわせ運動」をしています。しかし受け口では、すり合わせ運動ができず、うまく咀嚼(そしゃく)することができません。クチャクチャ音を立てて食べたり、固いものが苦手になったり、食事にとても時間がかかったりします

受け口は、口のしまり具合や舌の位置にも影響を与えます。「さ行」や「た行」が言いにくくなり、発音が舌足らずで不明瞭になります。治療をせずにいると、だんだん骨格が変形していき、将来的には、より骨格的な受け口傾向が強まる可能性があります。

「受け口かな?」と思ったら気を付けたいこと

受け口をはじめとする歯並びの問題は、「歯の位置」によって起こる場合と、「あごの形」によって起こる場合とがあります。これらは遺伝的な要因が大きいのですが、それだけでなく、日ごろの生活の様子も影響します。

例えば普段の口の閉じ具合や舌の位置、ものを食べる時の動作などで、毎日弱い圧力がかかり続けることで、徐々に歯の位置やあごの形が決まってくるといわれています。幼い時ほど、あごの骨がやわらかいのでその影響が強くなります。

乳歯が生えそろう前の1~2歳までは、受け口などの歯並びの問題があっても、50%くらいの確率で自然に治るといわれていることから、「うちの子は受け口かも?」と思っても、まずは様子を見ましょう。

子どもの口の成長に合わせた固さの離乳食や食事を与えていけば、あごのバランスや歯の位置がだんだん整っていくことも多いのです。

3歳を過ぎて、乳歯が生えそろった段階でまだ治っていなければ、治療の対象になります。

受け口の治療法

受け口の治療期間の目安は「1年」程度

受け口の治療は、まずレントゲン撮影や歯型を取る検査をして、原因を探ります。治療期間の目安は1年程度。保険診療ではなく自由診療になります。他の歯並びの治療と比べると期間が短いのが特徴です。次のような器具を家庭で使用していただき、1~2カ月おきに経過を観察していきます。

マウスピース型の機能矯正装置

3~4歳の頃は、口の閉じ具合や舌の位置が歯並びに大きな影響を与える時期です。そのため、夜寝ている時にマウスピース型の機能矯正装置を入れて、口や舌が正しい形をキープするようにします。こうして筋肉やあごの骨のバランスを整えて治療します。治療期間は1年から1年半ほどかかります。

フェイスマスク(上顎前方牽引装置)

5~6歳以降の子どもや、骨格のずれが強い人は、キャッチャーミットのような形をしているフェイスマスク(上顎前方牽引装置)をつけます。見た目はインパクトがありますが、装着しても痛みはありません。主に寝ている時に装着しますが、半年から1年未満で治る人がほとんどです。

再発率が高いため、定期的な健診が必要

受け口は矯正装置を使うことで、そのほとんどを治療できます。しかし、成長するにつれて再発しやすくなるので注意が必要です。いちど治ったからといって油断せずに、3ヵ月~半年に1回の定期健診でチェックしていきます。小学生以降で再発した場合は、フェイスマスクをつけて治療します。

ただ、なかには「どうせ再発率が高いのだから、大人になってから治せばいい」「今はまだ治療を始めなくても大丈夫」と考える歯科医もいます。しかし、大人になってからでは、子どもの時のような矯正はできません。成長期を過ぎてしまうと、手術であごの骨を削ったり、歯を抜いたりしなければいけなくなります。

年齢が高くなるにつれて治療が難しくなるので、長期的に経過を見ていくことが大切です。もしも歯科医院で治療の先延ばしを提案された場合は、今後どのような治療をする予定なのか、それは自分たちにとって納得のできるものなのか、しっかり説明を受けましょう

受け口は家庭療法で治せるの?

インターネット上では「家庭療法で受け口が治った」という体験談もいろいろとあるようです。ただ、上あごが引っ込んでいるなど骨格に問題がある場合は、歯科医院で治療しなければ自然治癒は難しいでしょう。家庭療法だとかえって歯並びが悪くなるリスクもあります。レントゲンを撮って診断をしないと原因がわからないことが多いので、歯科医院の受診をおすすめします。

受け口の治療は、普段から子どもをよく診ている歯科医院にかかることをおすすめします。細かい治療方針は先生によって違うので、よく確認してください。

坂部 潤

坂部 潤(小児歯科医、歯学博士)

日本小児歯科学会認定小児歯科専門医。東京・目黒、成城、麻布、代々木上原にある小児歯科専門医院キッズデンタルを開業。継続管理型の小児歯科専門医療を提供している。

トップへ戻る