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【口腔機能低下症①】成人・高齢者の口腔機能に「維持」と「改善」の視点を

公開日2026年02月16日

口腔機能低下症という言葉は聞いたことがあるけど、何から学べばいいですか?

まずは口腔機能全体を理解するところから始めましょう

概要

口腔機能低下症は、加齢や疾患によって口腔機能(咀嚼・嚥下・構音など)が低下した状態です。「むせることがある」「食べこぼしが増えた」といった変化は、実は口腔機能低下のサインかもしれません。50代では約半数が口腔機能検査によって口腔機能低下症と診断されたという報告があります。前段階のオーラルフレイルは早期に気づけば予防・改善し、元の状態に戻すことができます。口腔機能及び心身機能を評価するための観察するスキルが重要です。普段から患者さんを注意深く観察する習慣をつけましょう。

※出典:太田 緑ら「地域歯科診療所における口腔機能低下症の割合」日本老年歯科医学33(2),70-84,2018-09-30

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口腔機能とは

口腔機能とは、摂食、咀嚼、嚥下、言語といった働きの総称です。舌・口唇・頬・顎・歯・唾液腺などが連動して成り立ち、一つが弱くなると全体のバランスが崩れます。これらの機能は、小児期に「発達」し、成人期に「維持」され、高齢期には「低下リスク」が高まります。つまり口腔機能は、ライフステージを通じて常に変化し続けます。

口腔機能低下症とは

口腔機能低下症は、以下のような状態が複合的に現れることで診断されます。

1.口腔衛生状態不良:口の中の清掃状態が悪く、細菌が増えやすい
2.口腔乾燥:唾液の分泌が減り、口の中が乾きやすい
3.咬合力低下:噛む力が弱くなり、 かたいものが食べにくい
4.舌口唇運動機能低下:舌や唇の動きが悪くなり、食べこぼしや発音の不明瞭さが出る
5.低舌圧:舌で押す力が弱く、食塊を咽頭に送り込めない
6.咀嚼機能低下:食べ物をすりつぶす力が落ち、誤嚥・窒息のリスクにつながる
7.嚥下機能低下:飲み込みがうまくいかず、むせや誤嚥が起きやすい

これら7項目のうち3つ以上該当すると、口腔機能低下症と診断されます。

なぜ口腔機能は低下するのか

口腔機能低下症が注目される理由は、単に「口腔の問題」にとどまらず、全身の健康に大きく影響するからです。口腔機能の低下は、加齢だけが原因ではありません。歯の喪失、義歯の不適合、唾液分泌の減少、筋力の低下、服薬の影響、栄養不足、社会的孤立など、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こります。たとえば、栄養摂取量が低下し全身の筋力が低下する中で口腔の筋力も低下する。つまり、口腔機能の低下は「ある日突然」起こるのではなく、日常生活の中で少しずつ進行していきます。

歯科衛生士ができること

口腔機能低下症の診断には専門的な検査が必要ですが、日常のメインテナンスの中で「ささいな変化に気づく」ことは、歯科衛生士だからこそできる重要な役割です。たとえば、口腔内の清掃状況、舌の動き、唾液の状態、患者さんとの日常会話など、毎回の診療で目にしている情報が、実は口腔機能低下の早期発見につながります。「最近、かたいものが噛めなくなった」という何気ない会話から、嚥下機能の評価が必要かもしれないと気づくこともあります。患者さんの「食べる・話す」を長く支えるために、まずは口腔機能という視点を持つことが第一歩です。

まとめ

口腔機能低下症は、口腔機能が複合的に低下する状態であり、その前段階であるオーラルフレイルの早期発見・介入が重要です。OF-5(Oral frailty 5-item Checklist:オーラルフレイルチェック)を活用することで、患者さん自身も歯科衛生士も、口腔機能の変化に気づくことができます。口腔機能全体を理解し、日常のメインテナンスで患者さんのささいな変化に気づき、やさしく声かけをすることから始めましょう。

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監修:糸田 昌隆

大阪歯科大学 医療保健学部 口腔保健学科 教授
大阪歯科大学附属病院 口腔リハビリテーション科 科長 教授

※監修者情報は公開時のものです。

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