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【オーラルフレイル対策】オーラルフレイルを自分ごと化してもらうためには​

公開日2024年12月20日

患者さんが「オーラルフレイル?まだ大丈夫」と思っています

口腔機能状態を見える化して、ささいな変化を患者さんに伝えよう

自分ごと化の第一歩は、オーラルフレイルについて患者さんに知ってもらうことから始まります。さらに、検査によってオーラルフレイルを見える化し、測定の結果や評価が数値で示され、その結果を記録することで自分の状態が分かりやすくなり、患者さんはささいな変化に気づくことができるようになります。

オーラルフレイルとは


オーラルフレイルの見える化

2024年4月に日本老年医学会・日本老年歯科医学会・日本サルコペニア・フレイル学会の3学会合同でOF-5(Oral frailty 5-item Checklist:オーラルフレイルチェック)が発表され、5項目を問診するだけでオーラルフレイルを簡単にスクリーニングできるようになりました。​
OF-5の設問に「半年前と比べて…」の記載があるため、6ヶ月毎に実施することで早期での気づきにつながります。​

また、OF-5に加えて滑舌低下のチェックは簡単に測定できるため、客観的な評価として取り入れやすい検査です。

オーラルフレイルのチェック項目

項目質問該当非該当
残存歯数自分の歯は、何本ありますか?(差し歯や金属のかぶせた歯は、自分の歯として数え、インプラントは自分の歯として数えません。)0~19本20本以上
咀嚼困難感半年前と比べて固いものが食べにくくなりましたか?はいいいえ
嚥下困難感お茶や汁物等でむせることがありますか?はいいいえ
口腔乾燥感口の渇きが気になりますか?はいいいえ
滑舌低下
(舌口唇運動機能の低下)
普段の会話で、言葉をはっきりと発音できないことがありますか?はいいいえ

※滑舌低下について:舌口唇運動機能(巧緻性および速度)の検査であるオーラルディアドコキネシスは、医療機関ではない場所でも、簡便な測定装置もしくはアプリケーションを用いて、上記5項目に加えて実測が可能です。

項目計測該当非該当
滑舌低下
(舌口唇運動機能の低下)
オーラルディアドコキネシス
(夕音の1秒あたりの発音回数)
6.0回/秒未満6.0回/秒以上

出典:オーラルフレイル 3学会合同ステートメント

患者さんに自分ごと化してもらうには

①患者さんにオーラルフレイルを知ってもらう

・待合室や診療室内にポスターを掲示する​
・オーラルフレイルのパンフレットを診察前に渡し、読んでもらう​

②歯科衛生士が「オーラルフレイル」を説明して患者さんに理解してもらう​

・65〜69歳の3人に1人がオーラルフレイルであること​
・いつまでも健康な生活を送るためには口腔機能の維持は欠かせないこと​
・オーラルフレイルは、「健口の状態」と「口の機能低下」の間にある状態のこと​
・オーラルフレイルが悪化すると、口の機能低下を介して口の機能障害に進むこと​
・オーラルフレイルは、低栄養やサルコペニア(筋肉減弱)、フレイル※を引き起こすと考えられていること​
・オーラルフレイルは、「健口の状態」に回復が可能であること

※フレイルとは
高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念

引用:フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント2014年

③検査結果で患者さん自身の状態を見える化する​

・OF-5を受けてもらい オーラルフレイルかどうか確認する​
・6ヶ月ごとにOF-5を実施 前回と比較する​
・オーラルフレイルではない場合は、「次回もオーラルフレイルになっていないか確認しましょう」など声をかけ、継続したチェックを促す

オーラルフレイル予防が重要にもかかわらず、「患者さんにまだそんな年齢じゃないと思われそう」、「うまく説明できない」など不安に思う歯科衛生士もいるかもしれません。

​口腔機能状態の「見える化」は歯周基本検査で歯周ポケットを測定、記録し結果を比較することと同じです。患者さんの主観と合わせオーラルディアドコキネシスのような客観的な評価を記録しておくことは、ささいな変化の気づきだけではなく、院内共有もできます。数値の変化は患者さんの励みになり、自分ごと化につながります。

対策のポイント

早期に口腔機能の低下に気づき、対応することで回復が望める状態であるからこそ、オーラルフレイルへの理解が患者さんに必要です。​

順序立てし、丁寧に時間をかけて説明することが、オーラルフレイル理解への近道です。​
まずは「オーラルフレイル」という言葉に触れてもらうところからはじめましょう。​

自分が担当する50歳以上の患者さんには、オーラルフレイル(とOF-5)を念頭に置きながらメインテナンスを実施するよう心がけましょう。オーラルフレイルの症状がひとつでもある患者さんがいたら口腔機能低下症を疑い、歯科医師に伝えましょう。オーラルフレイルと判断できたら、口腔機能低下症の検査・診断に移行、口腔機能管理計画書に基づき、オーラルフレイルを改善・管理し、患者さんを支援していくことが歯科衛生士としての役割です。

監修:糸田 昌隆

大阪歯科大学 医療保健学部 口腔保健学科 教授
大阪歯科大学附属病院 口腔リハビリテーション科 科長教授

※監修者情報は公開時のものです。