4~5歳の患者さんに理解・実践してほしいポイントをまとめました。患者さん・患者さんの保護者と一緒にチェックしましょう。
理解してほしいこと
1. 食べたらみがく習慣
子ども自身の生活範囲が広がり、間食の種類も豊富になってくるため、口腔内はう蝕が発生しやすい環境になります。
食後まもなく、プラーク(歯垢)に覆われた歯の表面は、カルシウムやリンなどのミネラルが溶け出す酸性状態(pH5.5以下)になります。唾液の働きで元の中性状態に戻るには40分ほどかかり、その間はう蝕になりやすい状態が続きます。う蝕を予防するために、「食べたらみがく」習慣をつけるように指導しましょう。
2. 後続永久歯の大切さについて
乳歯から永久歯への交換は、下顎中切歯から始まり、男子が平均6歳3カ月、女子が平均6歳0カ月から萌出してきます。永久歯は一生使い続ける歯なので、萌出したらう蝕にならないように、この時期からブラッシングにより一層気を配る必要があります。
乳歯はどうせ抜けるから、とケアを疎かにするのではなく、乳歯がう蝕になり進行すると、下に待ち構えている永久歯にも影響をおよぼすことを伝え、乳歯のうちから永久歯を視野に入れたケアができるようにしましょう。

3. 歯科診療所に通う意義
小学校に入ると、子どもの生活習慣が大きく変わり、健康管理がおろそかになることもあるでしょう。しかし、生涯にわたって予防歯科を実践するためには、乳幼児期に培った習慣を継続していくことが大切です。歯科診療所に定期的に通うことによって、永久歯が正常に萌出しているか、う蝕や歯周病のリスクが高くないかなどを確認でき、トラブルがあれば早期対応ができます。
さらに、4~5歳児は、特に臼歯の咬合面と隣接面にう蝕ができやすく、注意が必要です。う蝕を確認するにはエックス線撮影が必要ですので、歯科診療所の定期健診を受けるようにすすめましょう。定期健診では、萌出したばかりの永久歯を守るために、フッ化物歯面塗布ができることも伝えるとよいでしょう。
実践してほしいこと
1. 自分みがきを率先して行う
本格的に自分でみがく練習を始めるように指導しましょう。子どもが理解ができるような言葉がけで、ブラッシングのテクニックを少しずつ定着させていきます。目標は「臼歯の咬合面と頬側を、自分でみがけるようになる」ことです。
2. 仕上げみがきを行う
自分でみがけているように見えても、萌出途中の歯や隣接面など、まだ子ども一人ではきちんとみがけないところがあるものです。毎日(特に就寝前)、保護者による仕上げみがきを行いましょう。またきちんとみがけているかの確認も兼ねた点検みがきは、9~10歳くらいまで必要であることも合わせて伝えておきましょう。
仕上げみがきでは、動揺歯もほかの歯と同じようにみがいて構いません。気になる場合は、歯ブラシを持つ反対側の手の指を歯に軽く添えてみがくようにアドバイスします。
3. フッ化物配合歯みがき剤を使う
ぶくぶくうがいができるようになったら、年齢に応じたフッ化物配合歯みがき剤を使うことを提案してみましょう。1回の使用量は5㎜以下、ぶくぶくうがいは少量の水を口に含み、1回すすぐなど、適切な使用方法も説明しましょう。
4. 臼歯のプラーク(歯垢)きちんと落とす
第二乳臼歯は、一番奥に萌出するので、歯ブラシが届きにくいです。プラークや食物残渣など汚れがきれいに落ちているか確認し、みがき残しがあれば、仕上げみがきできちんと落とすように指導しましょう。
5. 隣接面のプラークをきちんと落とす
隣接面にプラークがたまりやすいか状況を確認し、仕上げみがきにデンタルフロスを取り入れることをすすめてみましょう。

監修:朝田 芳信
鶴見大学 歯学部歯学科 小児歯科学 教授
※監修者情報は公開時のものです。