歯みがき習慣がつくられた100年

歯みがき習慣が根付くまでには歯科医師、行政、企業の力を結集した粘り強い取り組みがありました。「むし歯撲滅」から「健康寿命の延伸」へ。目標も時代とともに変化しています。その歩みをたどってみましょう。

⑮80歳過ぎても自分の歯で食べたい QOLを高める8020運動

目指せ、80歳になっても20本以上

「8020運動」という言葉は、どなたも聞いたことがあるでしょう。これは、1989(平成元)年、厚生省(当時)と日本歯科医師会が推奨している「80歳になっても20本以上自分の歯を保持する」という運動の呼び名。少なくとも20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われています。高齢化が進むなかで、生涯を通した健康で文化的生活の実現を目指す取り組みです。
1987(昭和62)年の調査では、80歳以上で20本以上の歯を持つ人は7%、80歳の平均現在歯数はわずか4本だったのですから、これは相当に高い目標でした。それでも、当時の歯科関係者―厚生省や日本歯科医師会、歯科衛生士会、民間企業などは、8020運動推進のために精力的に動き始めました。
そうしたなか、大きな役割を期待されたのが歯科衛生士でした。治療に至る前の日頃の予防的保健指導が重要になってきたからです。そこで歯科衛生士の質の向上に向けた取り組みもいっそう盛んになりました。ライオン歯科衛生研究所では毎年「ライオン健康セミナー(旧 ライオンNew Year セミナー)」を実施し、全身の健康や8020運動に結びつく必要な知識や技能を詳しく紹介するなど、口腔保健に役立つ最新情報を提供しています。

2人に1人が「8020」を達成

各方面のさまざまな活動によって、2016(平成28)年の調査では「8020」達成率が51.2%に増加しました。今では、80歳の2人に1人以上が、20本以上の歯を守っています。
日本の口腔保健活動は、長い間歯科医師の団体やライオンなど民間企業がリードしてきましたが、8020運動以降、国が率先して活動を主導するようになりました。2000(平成12)年には「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」がスタート、3年後にはその運動の法的基盤となる「健康増進法」を施行。そのなかには「歯の健康の保持」も明記されています。2009(平成21)年には「噛ミング30(カミングサンマル)」を提唱。ひと口30回以上かむことを目標にしたキャッチフレーズで、健全な心身や豊かな人間性を育むことや「8020」の達成につながっています。

⑯むし歯予防から歯周病対策へ 口腔ケアは進化する

参加者に検査・指導を行う「歯周病リスク検査プログラム」の様子
参加者に検査・指導を行う「歯周病リスク検査プログラム」の様子

メインテーマは「歯と口の健康」に

口腔ケアといえば、かつてはむし歯予防が大きな課題でした。このホームページでも紹介してきたように、歯科医師や学校、国や民間企業が力を合わせてむし歯撲滅に取り組んだ結果、子どもたちのむし歯は大幅に減りました。
現在では、口腔ケアのメインテーマは、むし歯予防から口の中の健康を守ることへと変わってきています。口の中の健康が、全身の健康につながることがわかってきたからです。
「むし歯予防デー」が始まったのは、今から90年前の1928(昭和3)年のこと。6月4日にちなんだこのネーミングも、今では「歯と口の健康週間」に変わっています。こんなことからも、口腔ケア意識の変化が見て取れます。
むし歯予防デーは始まった当時から主に子どもを対象にしていましたが、11月8日は、大人向けの「いい歯の日」。1993(平成5)年、日本歯科医師会によって始められました。子どもと違って定期的な歯科検診を受けにくい大人やお年寄りにも、口腔ケアに関心を持ってもらうことが狙いです。

急がれる歯周病対策

大人の口の中のトラブルといえば、なんといっても歯周病です。
2011(平成23)年の歯科疾患実態調査では、55歳以上の約半数が4ミリ以上の歯周ポケット持っていることがわかりました。放っておけば、歯を失うことになりかねません。
長年、口腔保健活動をリードしてきたライオンも、急務となっている歯周病対策に取り組んでいます。歯周病のリスクや歯周病の予防方法、高齢者のかむ力や飲み込む力など、口腔機能の大切さについて様々な場で啓発活動を行っています。
子どもたちのむし歯予防から始まった口腔ケアは、歯周病対策へ、さらに健康長寿の推進へと、新たな段階を迎えています。